明日は明日の恋をする
「そんな女くれてやるよ。ただ、アンタもすぐに別れたくなるだろうぜ。だってそいつ、ヤらせてくれないからな。」

義雄の口から聞きたくない言葉が次々と出てくる。昨日まであんなに優しかったのに…何で…。

義雄は私と目を合わすことなく、一緒にいた女性とその場を立ち去った。私は緊張の糸が切れ、義雄に対する怒りと悲しみと悔しさが一気に込み上げてくる。

「最低の男だな、あれは。」

義雄が居なくなると、社長は無表情になり私を抱きしめていた手をパッと離した。

「あ、あの・・ご迷惑をおかけしました。」

社長の方を向き頭を下げようとしたが、足に力が入らず、私はその場に崩れるように座り込んでしまう。

「あれ?」

立ち上がろうとするがやっぱり足に力が入らない。

「手の掛かる女だな。」

社長は座り込む私を見て一回ため息をつき、やれやれというような表情で私をヒョイっと持ち上げる。

「えっ・・えぇ?」

私は人生初のお姫様抱っこをされている。

どうしよう…。

持ち上げられた瞬間、私の中の色んな感情が吹っ飛び頭が真っ白になる。

「ったく、ちゃんと俺にしがみついとけよ。」

そう言うと社長は私を抱えたままマンションの方へ向かって歩き始めた。

「社長、お疲れ様です。」

マンションの入り口では男性が待っていた。男性は私のせいで手が塞がっている社長の代わりに入り口にある機械にカードキーを通す。入り口が開くと社長と男性はスタスタと歩き、エレベーターに乗り込んだ。
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