明日は明日の恋をする

それから話も盛り上がり、二人の呑むお酒のペースも進んだ。高瀬さんとは話しして楽しい。ついつい時間も忘れてしまう。

「もうこんな時間…。私そろそろ帰らなきゃ。」

時間を確認すると日付も変わっていた。

「帰っちゃうの？寂しいな。」

高瀬さんがじぃっと私を見つめてくる。

「あはは、今日は楽しかったです。誘ってくれてありがとうございました。」

「また誘ってもいい？」

「はい…あっでも高瀬さんって彼女いないんですか？」

「彼女いたら誘わないよ。あっ、ちなみにケイスケにはいるよ彼女…っていうか婚約者(フィアンセ)か。」

「え…？」

進藤さんに婚約者？やっぱり特定の人が居たんだ…。何故だか分からないが、私の胸の奥がチクっとした。

「今日もその婚約者と会ってるはず…。もしかしてショック受けた？」

「そ、そんな事は…。」

私は必死に笑顔を作る。すると高瀬さんは笑みを浮かべながら私に近づいてきた。

「ケイスケに惚れても…報われないよ？」

私の目を見ながらそう言うと、そのまま顔が近づいてきて、気がつくと唇が重なり私と高瀬さんはキスをしていた。

え…えぇ！？

唇が離れると一回ギュッと私を抱きしめてそっと離れた。

「タクシー呼ぶね。」

高瀬さんは携帯を持ち、そのままタクシーを呼ぶ。私はその場に座り込んだまま呆然としていた。

「マンションの前にタクシー呼んだから、下まで送るよ。」

何事もなかったかのようにニコッとして私を見る。私もようやく立ち上がり、帰り支度をする。

マンションの外に出ると、タクシーらしき車が遠目に見えた。

「あ、あの…今日はありがとうございました。」

私はペコリと頭を下げる。そしてキスの事には触れなかった。きっとお酒のせいだろうから…。

「うん、またね。……あと…さっきのキスはお酒のせいじゃないから。」

「え…？」

どういう意味だろう…。

聞き返そうとしたが、タクシーが到着してしまった。タクシーのドアが開き、高瀬さんが行き先を伝え、お金も渡してくれた。

「じゃあね。」

タクシーのドアが閉まる。外では高瀬さんが笑顔で手を振っていた。私も手を振り返す。

そして何故キスをしたのか分からないまま、進藤さんのいるタワーマンションへ着いた。