明日は明日の恋をする
「その顔は思い出してくれたみたいですね。」

「昨日の・・・社長さん、相当怒ってますか?」

「さぁ、どうですかね?取り敢えずココで立ち話も何ですから、車の中で続きをお話ししましょう。あと、こちらに着替えていただいて良いですか?」

男性は紙袋を渡してきた。私は拒否する事も出来ずその紙袋を受け取り、着替えるために一旦部屋に戻る。

部屋に戻り紙袋を開くと、女性用のスーツとヒールが入っていた。よくは分からないが、言われた通りそのスーツに着替ると、私のサイズにピッタリだった。茶色の長い髪を一つにまとめ、化粧をして身支度を整えて、ヒールを履き男性の待つ外へ出る。

「へぇ、よくお似合いですよ。さぁ行きましょうか。」

男性についていくと、明らかにこの場に不釣り合いな黒の高級車が、アパートの近くに停めてあった。彼は手慣れた感じでキーで鍵を開け、助手席側のドアを開ける。

「どうぞ。」

男性の一言で、思わず高級車に見惚れていた私は我に帰り、緊張しながら高級車に乗り込む。高級車に乗るのも初めてだけど、男性にエスコートしてもらうのも初めてで、私の内心は相当戸惑いまくっている。

「では出発します。」

エンジンをかけ車を出発させた。流石は高級車、乗り心地は抜群だ。しかし、車内ではしばらく沈黙が続く。何か話しかけた方が良いのか悩んだが、取り敢えず気になる事を質問してみた。

「あ、あの・・私は何処に連れて行かれるのしょうか?」

「もちろん社長のところですよ。会うの怖いですか?」

「いえ、もう一度きちんと謝りたかったのでお会いできるのは有り難いです。」

ふと車の中から外を見ると、大きなビルが並ぶビジネス街に来ていた。道行く人々を見ると、やはりスーツ姿のビジネスマンやOL達が多い。今、スーツ姿の私が歩いても違和感なくビジネス街に溶け込むことができるだろう。
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