明日は明日の恋をする
「あの・・今日はどうして私をここへ連れてきたのですか？」

私の質問に社長はニッコリしてソファから立ち上がり、社長の机の引き出しから1枚の紙を取り出した。

すると社長はソファに座る私の後ろへ回り、後ろからそっとその紙をテーブルの上に置いた。私は置かれた紙に目を通す。

！？

見間違いかと思い、両手で紙を持ち上げ顔を近づけてもう一度見る。

「何ですか！？この紙。」

「見たまんまですよ。」

その紙には『借用書』と書かれている。スーツのクリーニング代や慰謝料として、と書かれているが、とても私に払える金額ではなかった。

「あの後大変だったんですよ。あなたにかけられた酒は冷たいし、ホステスはウザいし、接待をして下さった他の会社社長の機嫌もとらなきゃいけない。」

私の後ろから静かな声のトーンで話す社長は、さっきまでと雰囲気が違っていた。後ろにいて顔が見えない分余計に怖い。

「で、でも私にはとてもこの金額は払えません。」

「・・そうですか。じゃあ、身体で払ってもらうしかないな。」

社長はどかっと私の前のソファに座る。明らかにさっきまでと態度と口調が変わっていた。切れ長の目で力強く私を見る。

「か、身体で・・っていうか、社長さっきまでと全然態度違うじゃない。」

「出すもの出せない奴に仕事モードで接する必要ないだろ。まぁお前の事は調べてあるから、最初から金ない事は知ってたけどな。」

「調べ？」

「水沢 明日香、24歳。 古いアパートで一人暮らし。昼間は飲食店でアルバイト、夜はホステスをして生活費を稼いでいる。そして給料の殆どを男に貢いでいるため、いつもギリギリの生活を送っている。」

どこで調べたのか社長の言ってる事は殆ど間違ってない。でもひとつだけ…

「男に貢いでなんかないわよ。彼氏に喜んでもらいたくて勝手にプレゼントしてるだけ。」

「同じ事だろ。 さっきも言ったけど金がないなら身体で払ってもらうからな。」

あの夜の最後に見た冷たい目と同じ目をして私を見てくる。
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