明日は明日の恋をする

「ふぅ。何やってんだろう…私。」

部屋の外に出ると、壁にもたれかかり呟いた。一息ついてそのままホテルの外へと行き、高瀬さんが来るのを待つ。

「明日香ちゃん。」

高瀬さんがホテルの前に来た。走ってきたのか前髪が汗で濡れていた。

「高瀬さん、わざわざすみません。」

「やだなぁ、2人の時もナオ君って呼んでよ。今日は俺の彼女でしょ？可愛い彼女が夏に浮かれたバカな男にナンパされちゃいけないからね。迎えにもくるさ。じゃあ戻ろうか。」

そう言って私の前に手を差し出してきた。私は高瀬さんの手を取り、進藤さんと美玲さんの待つ海へと歩き始める。

「…何か元気ないね。」

高瀬さんが心配そうに私の顔を覗き込む。

「えっ…そ、そうかな。いっぱい走ったから疲れたのかも。」

「そういえば俺も走ってきたから喉が渇いたな。せっかくだから海の家で色々食料を仕入れて、あの2人にも庶民の味を堪能してもらうか。」

今は何も考えないようにしよう。

それから私と高瀬さんは海の家で飲み物と食べ物を買った。

「ちょっと、ナオ君何してるの！？」

「ケイスケの鉄壁の仕事モードを崩してみたくない？これをこうして……。」

高瀬さんは飲み物を手に取りニィっと少年のように笑う。

「遅くなりました。色々買ってきたのでみんなで食べましょう。」

高瀬さんは満面の笑みで買ってきた飲み物を配る。その笑顔が私には小悪魔に見えた。

何故なら…

プシューッッ

進藤さんが高瀬さんに渡されたコーラを開けると、中からコーラが勢いよく溢れ出てきた。そう、これは高瀬さんのイタズラ…。予めコーラをよく振っていたのだ。そのせいで進藤さんはコーラまみれになった。

私はハラハラしながも何だか可笑しくて必死に笑いを堪える。

「社長…だ、大丈夫ですか？」

高瀬さんも笑いを堪えながら進藤さんに声をかける。どちらかというと、高瀬さんの方が仕事モードが崩れそうになっている。

「……何でコーラが吹き出てくるのかな？」

進藤さんは濡れた前髪を上にあげながら、高瀬さんを見て怖いくらいの笑顔を見せる。

「何ででしょうね？」

高瀬さんも負けじと笑顔を返す。