My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 2
(小さい声でなら……ちょっとだけなら……)
私はもう一度辺りをキョロキョロと見まわし、人がいないことを再度確認した。
そして小さく息を吸う。と、
――絶対に歌うんじゃねぇぞ!!
そんなラグの声が頭に響いた気がした。
お蔭で私は何とか衝動を抑えることが出来た。
……今彼がここにいない理由。それは私にあるのだということを思い出した。
(ルバートで私が歌を歌わなければ、ラグはストレッタに戻る必要無かったんだもんね)
私は一度深呼吸をし、パンと両頬を叩いた。
(今は我慢、我慢!)
彼がいない今、特に勝手な行動は出来ない。
……ここは異世界。そしてまだ良くわかっていない銀のセイレーンの力。
軽い気持ちでも歌うことによって、何が起こるかわからない世界なのだ。
私は部屋へ戻ることにした。
水が欲しくて部屋を出てきたけれど、勝手に厨房に入るのはやはり気が引けた。
皆が起きる時間までもう一寝入りしようと、食堂を出ようとした、その時だ。
向こう側からドアが開き、心臓が飛びあがった。