終着駅は愛する彼の腕の中
4北の運転手


 2週間後。

 季節は秋になってきて、だいぶん寒くなってきた。

 
 羽弥斗は鉄道博物館で、変わらず勤務している。

 まだノエリの事は忘れられない様だ。


 普通に話をするようにはなったが、どこか寂しそうな目をしている。



 
 羽弥斗とノエリが別れて2ヶ月目に入っていた。

 あれからノエリの行くへは全く分からない。

 住所を不定にしているのかもしれない。


 

 秋も深まった今日この頃。


 羽弥斗は休日で、のんびり家で過ごしていた。


「羽弥斗、今日はどこか出かけるのか? 」

「いや、どこも出かけないよ」

「そっか、じゃあ僕に付き合ってくれる? 」

「え? 」


「なになに? 2人ともどっか行くの? 」


 ひまわりがやって来た。


「ちょっと久しぶりに、遠出しようかと思って。すみれは今日は出張でいないし、この頃ずっと家の中ばかりだからさっ」

「うん、賛成! 私も行く! 」


「僕はいいよ、2人で行っておいでよ」

「だめだよお兄。このままじゃ、引きこもりになっちゃうもん。無理やりでも、連れて行くから」


 ひまわりに押されて、羽弥斗はしぶしぶついて行く事にした。



 
 瑠貴亜は特に行先も告げないまま、羽弥斗とひまわりを連れてきた。


 駅に来ると手際よく切符を買う瑠貴亜。


「なになに? お父さん、今日は新幹線の乗せてくれるの? 」

「ああ、今日は北に行ってみようと思ってね」

「え? 北? 東北新幹線? 」

「うーん。もっと北かな? 」



 瑠貴亜に連れられて、とりあえず着いて行く羽弥斗とひまわり。



 座席は一般車両で自由席だが、西に行く新幹線とはまた違う。


「すごいね、北に向かう新幹線って乗り心地がとってもいいね」


 ひまわりはとてもご機嫌。

 羽弥斗はいつもよりは、ちょっとだけ微笑ましい顔している。

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