終着駅は愛する彼の腕の中
「あ、あの。とりあえず、僕の隣に座って」
ベッドに座っている羽弥斗が隣を指して言った。
エイミは少しだけ距離を置いて羽弥斗の隣に座った。
「ねぇ。どうして、この仕事を選んだの? 」
「・・・身元調査なら、お断りしています。・・・」
「いや、そうじゃないよ。だって、とても悲しい目をしているから。どうしてなのか、気になったんだ」
「別に・・・悲しくなんてありません。・・・悲しみなんて・・・慣れてしまって、通り過ぎてしまったので・・・忘れました・・・」
冷たく答えるエイミ。
だが、羽弥斗にはエイミの言葉がどこか深い悲しみに包まれているようで胸が痛くなった。
「聞いてもいい? 」
「なんですか? 」
「君は新幹線は好き? 」
「新幹線・・・ですか? ・・・」
「うん。僕は少し前まで、新幹線の運転手だったんだ。今は違うけど」
エイミはちょっとだけ、羽弥斗を見た。
「新幹線は・・・嫌いではありませんが、今は見てしまうと悲しくなります・・・。父が、新幹線の運転手でしたが・・・亡くなってしまったので・・・」
「え? お父さん、新幹線の運転手だったの? 」
「はい、主に北の方を走っていたので。家には・・・殆どいませんでしたが・・・」
「そうだったんだ・・・それで・・・」
羽弥斗はふと、鉄道博物館で新幹線を見て泣いていた女性を思い出した。
新幹線を見て泣いていた女性・・・。
その女性と、エイミが重なって見えた羽弥斗。
「ねぇ、君は僕と繋がったら。少しは悲しみから、解放されるの? 」
「え? 」
「誰かと繋がれば、君の悲しみは消えるの? 」
何・・・言っているの? この人・・・。
エイミはスッと視線を落とした。
「そうですね・・・今日が初めてですが。・・・多分、性欲を満たしている時はきっと。何もかも忘れられるんじゃないかと・・・」
シレっと答えたエイミ。
「そっか・・・じゃあ・・・」
ギュッとエイミの手を握って、羽弥斗は少し熱い目で見つめた。
その目に、エイミはドキッとした。