終着駅は愛する彼の腕の中


 新幹線ホーム。

 ノエリは線路を見つめた。


「どうしたの? ノエリ」

 羽弥斗が声をかけると、ノエリは小さく笑った。


「お父さんがよく言っていた事を、思いだしたの」

「どんな事? 」

「線路はずっと繋がっているって・・・。いつも、この北の地で運転手していたから。めったに家にいなかったけど。お父さん、カッコいいってずっと思っていたから」

「そっか。ノエリのお父さん、ここで頑張っていたんだね」

「うん・・・」




 ホームに新幹線が来た。


 ノエリは新幹線を見てちょっと驚いた目をした。



「これが・・・お父さんが運転していた新幹線なんだ・・・」

 
 かっこいいデザインの新幹線に、ノエリは見惚れてしまった。


「この新幹線は、まだ走り出して6年目だからね。色もここの地をイメージして赤色になったんだよ」

「そうなんだ。ここに来るときは、新幹線じゃなくて在来線で乗り継いで来たから」

「そうだったんだ。じゃあ初めてなんだね、この新幹線に乗るのは」

「はい・・・」

「じゃあ、ここはノエリの幸せへの乗り換え地点になるね。お父さんが残した想いは、ノエリがちゃんと金奈市に持って帰ってあげようね」

「はい・・・」





 定刻通り新幹線は走り出した。


 のどかな田舎を通り過ぎて・・・だんだんと都会へ向かってゆく・・・。



 乗り換えをして。

 見慣れた風景へと向かってゆく。



 振り返ると繋がっている線路が見えるだけ。


 
 
 
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