終着駅は愛する彼の腕の中
アキタの枕元に赤い新幹線が置いてあるのを見た羽弥斗。
「あれ? この新幹線どうしたの? 」
「お母さんが持って来てくれたの。北の新幹線が売っていたって」
「そっか、いつ見てもカッコいいな」
「お父さんが最後まで、運転していた新幹線なの」
羽弥斗はふと、ノエリを見た。
「そう言えばノエリ。鉄道博物館には、行った事ある? 」
「うん、1度だけ行った事あるわ。たしか、去年の夏だった。沢山の新幹線があったけど、お父さんの運転していた新幹線はなくて。初めて乗せてもらった、こだまを見ていたの」
「あ・・・じゃあ、あれはやっぱりノエリだったんだ」
「え? 」
「去年の夏に。こだまを見て、泣いていた女の人が居て。それを見た時、なんだか僕も悲しくなってきてずっと忘れられなくて・・・」
「ああ、きっと私ね。こだまは、各駅停車だからお父さんと長く乗っていられて、嬉しかったの。・・・あの時は、もう、二度と乗れないって思ったら悲しくなってきたの」
「そうだったんだ。今度は、アキタを連れて行こう。お父さんとの思い出に、アキタと僕も一緒に加えてね」
「うん・・・」
ギュッとノエリを抱きしめる羽弥斗。