ベリムズ~お笑いも恋も~
○喫茶店
静かな店内。
向かい合って座る笑と深山。
笑、固い表情。
笑N「芸人がファンに手出すって、迷信かと思ってたけど」
深山、笑顔。
深山「へー、『笑』で『さき』って詠むんですね」
笑「ええ、はい……」
深山「笑顔が咲くみたいで、本当にお笑いの女神様って感じですね」
笑「そんなことないです」
笑N「なにこの状況」
深山ニコニコしている。
笑N「というかこの人よこの人。急に『相方にも挨拶させたいから』って呼び出したのに、その相方が来ないからってお茶に誘う流れ……手練れだ」
深山「(スマホを見て)あっ」
笑「(驚く)」
深山、申し訳なさそうにする。
深山「すみません笑さん」
笑「はい?」
深山「(笑にスマホの画面を見せて)相方が来れなくなりまして」
笑「(嬉しそうに)あっじゃあ今日はこれで解散ということで」
深山「はい……ぜひ近い内にまた……次は申し訳ないので、笑さんのお宅などに自分たちが向かわせてもらいますね」
笑「えっ?」
笑N「待って待って。家に来られたほうが怖くない? え?」
深山「笑さん?」
笑「……相方の指田さん、いつ頃お戻りになるんですか」
深山「夕方くらいですかね」
笑「では、待たせてもらってもいいですか!」
○深山の部屋
片付いている深山の部屋。
笑、固まっている。
笑N「やっちゃったー!」
深山「適当に座っててください」
笑N「警戒するつもりが、自ら敵地に入ってきてしまった、どうしよう」
喫茶店回想。深山が自分の部屋で待つように提案している。
深山(回想)「じゃあ相方と同じマンションなので、俺の部屋で待ちますか?」
笑N「善意100パーセントの笑顔に頷いてしまった自分! ほんとばか!」
笑、台所にいる深山を睨む。
笑N「あの笑顔の裏に腹黒い思惑が隠されている可能性だって十分考えられたのに」
深山「(笑を見て)笑さん、コーヒーで大丈夫ですか?」
笑「はい! 大丈夫です!」
笑、ソファに座る。
笑N「とにかく! 夕方まで緊張感を持って(テーブルの上のDVD見つけて)あれ、このDVD」
お笑いのDVD。
笑N「これ『無人』が結成したての頃に先輩たちのライブに呼んでもらったライブの円盤! レアなヤツ!」
笑「あの深山さん、このDVDって」
深山「この前『無人』の古安さんにもらったんですよ。『家にめっちゃあるからー」って言って」
笑N「レアアイテムなのに!」
深山「勉強しようと思って最近見てるんですけど、一緒に見ますか?」
笑「見ます!」
○同(夕方)
お笑いDVDを見終わった二人。
笑「さっすが『無人』! 結成したのが学生のときで下積み時代が長かったことがある!」
深山「デビュー戦とは思えない貫禄ですね」
笑「それです! この空気が出せるのは今の若手で『無人』だけだと私は思っています」
深山「(吹き出す)語りが熱いですね」
笑「っ!(赤面)」
コーヒーを飲む笑。
笑「そ、そういえば! 深山さん年上ですよね。敬語使わなくていいですよ」
深山「え? そうなの?」
笑「はい。深山さん24歳ですよね、私23歳なので。公式プロフィール見ました」
深山「じゃあため口で話すけど……笑さんって俺らのこと嫌いなのに詳しいよね」
笑「嫌いじゃないです! おもしろくはないと思いますが!」
深山「うわあ、ハッキリ言うね」
笑「でも批評をしたいなら相手を知らないと。知らないで悪いところ並べたら、
ただのクレーマーじゃないですか」
深山「(驚いて)そっか」
笑「(深山を見て)どうしました?」
深山、席を立つ。
深山「いや……コーヒーのおかわり入れてくるよ。テレビの下に他のDVDも
あるから、好きなのセットして」
笑、テレビの下を見る。
並んでいるDVD。
笑N「けっこうたくさんある!」
笑、DVDを選び始める。
奥にあるDVDを引っ張り出す。
笑N「こんなに勉強熱心なのに、なんでおもしろくないんだろう……あれ」
アダルト系のDVDが出てくる。
笑N「深山さんも男性だからこういうの見るとは思うけど……ハードなやつ好
きなんだ」
深山「笑さん、コーヒー入れてきたよ」
笑「あっ(DVD持ったまま振り返る)ありがとうございます」
深山「(笑の持っているDVDを指さして叫ぶ)」
深山、コーヒーを置くと笑に近寄る。
深山「違うんです! そのDVDは」
笑「勝手に見ちゃってごめんなさい。深山さんの趣味のことは内緒に」
深山「そうじゃなくて! あー、もうとりあえず返してください!」
深山、笑に被さるようにDVD取り返そうとする。
玄関から解錠音と声(指田の声)。
指田「柄くーん、来いって言うから来たよー。入るねー」
指田、リビングに入ってくる。
接近している深山と笑を見る。
指田「あれ。柄くんと、女神さん?」
笑と深山、顔を引きつらせる。
静かな店内。
向かい合って座る笑と深山。
笑、固い表情。
笑N「芸人がファンに手出すって、迷信かと思ってたけど」
深山、笑顔。
深山「へー、『笑』で『さき』って詠むんですね」
笑「ええ、はい……」
深山「笑顔が咲くみたいで、本当にお笑いの女神様って感じですね」
笑「そんなことないです」
笑N「なにこの状況」
深山ニコニコしている。
笑N「というかこの人よこの人。急に『相方にも挨拶させたいから』って呼び出したのに、その相方が来ないからってお茶に誘う流れ……手練れだ」
深山「(スマホを見て)あっ」
笑「(驚く)」
深山、申し訳なさそうにする。
深山「すみません笑さん」
笑「はい?」
深山「(笑にスマホの画面を見せて)相方が来れなくなりまして」
笑「(嬉しそうに)あっじゃあ今日はこれで解散ということで」
深山「はい……ぜひ近い内にまた……次は申し訳ないので、笑さんのお宅などに自分たちが向かわせてもらいますね」
笑「えっ?」
笑N「待って待って。家に来られたほうが怖くない? え?」
深山「笑さん?」
笑「……相方の指田さん、いつ頃お戻りになるんですか」
深山「夕方くらいですかね」
笑「では、待たせてもらってもいいですか!」
○深山の部屋
片付いている深山の部屋。
笑、固まっている。
笑N「やっちゃったー!」
深山「適当に座っててください」
笑N「警戒するつもりが、自ら敵地に入ってきてしまった、どうしよう」
喫茶店回想。深山が自分の部屋で待つように提案している。
深山(回想)「じゃあ相方と同じマンションなので、俺の部屋で待ちますか?」
笑N「善意100パーセントの笑顔に頷いてしまった自分! ほんとばか!」
笑、台所にいる深山を睨む。
笑N「あの笑顔の裏に腹黒い思惑が隠されている可能性だって十分考えられたのに」
深山「(笑を見て)笑さん、コーヒーで大丈夫ですか?」
笑「はい! 大丈夫です!」
笑、ソファに座る。
笑N「とにかく! 夕方まで緊張感を持って(テーブルの上のDVD見つけて)あれ、このDVD」
お笑いのDVD。
笑N「これ『無人』が結成したての頃に先輩たちのライブに呼んでもらったライブの円盤! レアなヤツ!」
笑「あの深山さん、このDVDって」
深山「この前『無人』の古安さんにもらったんですよ。『家にめっちゃあるからー」って言って」
笑N「レアアイテムなのに!」
深山「勉強しようと思って最近見てるんですけど、一緒に見ますか?」
笑「見ます!」
○同(夕方)
お笑いDVDを見終わった二人。
笑「さっすが『無人』! 結成したのが学生のときで下積み時代が長かったことがある!」
深山「デビュー戦とは思えない貫禄ですね」
笑「それです! この空気が出せるのは今の若手で『無人』だけだと私は思っています」
深山「(吹き出す)語りが熱いですね」
笑「っ!(赤面)」
コーヒーを飲む笑。
笑「そ、そういえば! 深山さん年上ですよね。敬語使わなくていいですよ」
深山「え? そうなの?」
笑「はい。深山さん24歳ですよね、私23歳なので。公式プロフィール見ました」
深山「じゃあため口で話すけど……笑さんって俺らのこと嫌いなのに詳しいよね」
笑「嫌いじゃないです! おもしろくはないと思いますが!」
深山「うわあ、ハッキリ言うね」
笑「でも批評をしたいなら相手を知らないと。知らないで悪いところ並べたら、
ただのクレーマーじゃないですか」
深山「(驚いて)そっか」
笑「(深山を見て)どうしました?」
深山、席を立つ。
深山「いや……コーヒーのおかわり入れてくるよ。テレビの下に他のDVDも
あるから、好きなのセットして」
笑、テレビの下を見る。
並んでいるDVD。
笑N「けっこうたくさんある!」
笑、DVDを選び始める。
奥にあるDVDを引っ張り出す。
笑N「こんなに勉強熱心なのに、なんでおもしろくないんだろう……あれ」
アダルト系のDVDが出てくる。
笑N「深山さんも男性だからこういうの見るとは思うけど……ハードなやつ好
きなんだ」
深山「笑さん、コーヒー入れてきたよ」
笑「あっ(DVD持ったまま振り返る)ありがとうございます」
深山「(笑の持っているDVDを指さして叫ぶ)」
深山、コーヒーを置くと笑に近寄る。
深山「違うんです! そのDVDは」
笑「勝手に見ちゃってごめんなさい。深山さんの趣味のことは内緒に」
深山「そうじゃなくて! あー、もうとりあえず返してください!」
深山、笑に被さるようにDVD取り返そうとする。
玄関から解錠音と声(指田の声)。
指田「柄くーん、来いって言うから来たよー。入るねー」
指田、リビングに入ってくる。
接近している深山と笑を見る。
指田「あれ。柄くんと、女神さん?」
笑と深山、顔を引きつらせる。