ベリムズ~お笑いも恋も~
○深山の部屋(夕方)
   笑と深山、組み合っていた体を離す。
笑「あの! これはそういう雰囲気だったわけではなく! 事故です!」
深山「事故ではないけど! 違うからねサッシー!」
指田「(無言で二人に近づく)」
   指田、笑が持っていたDVDを見る。
指田「あー、これ前社長がくれたやつー」
笑「え!?」
指田「社長の趣味悪いよねー」
笑「えっと、指田さん?」
指田「大丈夫だよ女神さん。柄くん、そんなアブノーマルじゃないから!」
深山「ちょ、サッシー! 笑さんとはそういうんじゃないから!」
指田「でも今」
笑・深山「違います!(違うから!)」
   指田、ソファ指さす。
指田「とりあえず座ろうよ」
笑・深山「(疲れている)」
   三人、座る。
深山「笑さん、こっちが相方の指田です」
指田「サッシーでいいよー」
笑「早坂です」
指田「下の名前がサキって言うの?」
笑「はい。笑うって漢字で、サキって読みます」
指田「なるほどー、よろしく笑ちゃん」
深山「2人揃ったところで、笑さん」
笑「はい」
深山「俺らの悪いところ教えてくれないかな」
   笑、少し考えて話し出す。
笑「そうですね……私が思う『ベリムズ』さんの悪いところは」
指田「そんなのどうでもいいよ」
   指田、深山と自分を指さす。
指田「笑ちゃんから見て、俺らっておもしろいの?」
   笑、言いづらそうに話す。
笑「ハッキリ言って、おもしろくはありません」
指田「ハッキリ言うねー」
笑「(慌てたように)ですが改善していけばいくらでも」
指田「そういうのいいよ」
   指田、席を立つ。
深山「サッシーまだ話が途中だろ」
指田「聞いてもしょうがないでしょ。おもしろくないってことは、センスがな
 いんだよ俺ら」
深山「センスの分は努力でカバーしていけばいいだろ」
指田「無駄だよ。どうせ1年の約束なんだから」
深山「それは、」
   指田、手を振って部屋を出ていく。
指田「じゃあね笑ちゃん。ごゆっくりー」
   静かな室内。
笑「あの、1年の約束、って。一体」
深山「……事務所との約束で、俺らのコンビは1年間限定のコンビなんだ」
笑「限定ってことは、その後は……解散ってことですか?」
深山「うん」
   笑、無言で驚く。
深山「事務所にもサッシーにも、俺が無理言った節があるからさ。強く拒絶さ
 れるとちょっとキツイんだ」
   深山、笑顔を作る。
深山「ごめんね笑さん。変な話聞かせて。今日はもう暗くなるし、帰っていい
 よ」
   笑、深山の手を握る。
笑「勉強会をしましょう!」
深山「えっ」
   笑、テレビの下からお笑いDVDを全部取り出す。
笑「一から学んでいる時間はないです。『芸は盗むもの』って言うでしょう。パ
 クリはだめですが、『何がおもしろいかを見る力』はつきます!」
深山「笑さんにそこまで付き合わせるわけにはいかないよ」
笑「好きなんです!」
深山「(ドキッとする)」
笑「私、芸人さんのそういう熱い裏側話が大好きなんです!」
深山「あー、裏話がね」
   笑、下手に頼む。
笑「ただの素人ですが、よかったらお手伝いさせてください」
   深山、紙を出してくる。
深山「じゃあお手本にできそうなのは紙に書いていこう」
笑「了解です!」

○マンションの廊下(朝)
   指田、自室から出てくる。深山の部屋に向かう。
指田N「マネージャーから柄くんに伝えておけって言われてたの忘れてた」
   指田、深山の部屋の鍵を開けて入る。
指田N「柄くんにご飯も作ってもらえば、合理的―」
   玄関にある笑の靴。
指田N「朝帰り予定? やっぱりアドバイスなんて口実」
   テレビ画面、DVDの再生が終わっている。
   紙いっぱいに書かれたお笑いについてのメモ。
   笑と深山、ソファで寝ている。
   指田、部屋の様子を眺めて、部屋を出る。
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