偶然が続けば必然です!? 年下彼氏の包囲網
2章
〇オフィス・フロア(朝)

ノアの自己紹介で色めき立つオフィス。
女性たちが浮かれる中、琴葉はひとり呆然としている。

琴葉(……え、どういうこと?)

上司「皆も知っての通り、うちは今度、イギリスの大手化粧品メーカーとのコラボが決まっているね」
上司「彼はその化粧品会社から出向というかたちで来てくれたノアくん。見ての通り、日本語はペラペラだけど、慣れない土地で不安なこともあるだろうから気にしてあげて欲しい」
女性たち「はーい!」
ノア「よろしくお願いします」
女性たち「きゃー!」

状況が飲み込めず、上司の説明が頭に入ってこない琴葉。

琴葉(そりゃ、昨日別れた時、また一緒にお酒が呑めたらいいなあとは思ってたけど……)
琴葉(こんなにすぐ再会とかある? それも会社で?)
琴葉(……そうだ。よく似た別人かもしれない! 昨日は名前を聞かなかったし!)

上司「とりあえず、オフィスの中を案内したほうがいいか。誰か……」

社員を見回す上司。
立候補しようとする女性たち。
そんな女性たちをぐるりと見回すノア。
琴葉と目が合い、微笑まれる。

ノア「……それなら、本条さんに」
琴葉「!?」
女性たち「!?」

ざわざわとするオフィス。
女性たちの視線が琴葉に突き刺さる。

琴葉(なんで私!?)
女性社員1「えっ、なんで本条さん?」
女性社員2「知り合い、とか?」
女性社員3「今日、来た人とどこで知り合うのよ」
ノア「たしか、僕がお世話になるチームのリーダーって本条さんって方でしたよね?」
上司「ああ、うん。そうだよ」
女性社員1「……ああ、そういうこと」

ノアの返答に、女性たちの間に納得と安堵の空気が広がる。

上司「それじゃ、本条さん。お願いできる?」
琴葉「……はい」
ノア「よろしくお願いします」
琴葉「それじゃ行きましょうか」

〇オフィス・廊下(昼)

オフィス内をあらかた案内し終えたところ。
平静を装いつつも、琴葉はまだ動揺している。

琴葉「案内するところはこれくらいですけど、何か気になるところとかありますか?」
琴葉(気になることがあるのは私のほうだけど……)
ノア「いえ、特には。とても丁寧に案内してくれてありがとうございました」
琴葉「それなら良かったです」
琴葉(……やっぱり他人のそら似?)

ノアの反応に他人のそら似説が琴葉の中で大きくなる。
気を取り直して仕事へ戻ろうとしたところで、ノアが口を開く。

ノア「――また会えましたね」
琴葉「えっ……」

驚いて足を止める琴葉。
振り返ると、ノアはニコニコと笑っている。

琴葉(……またって言った? ってことは、やっぱり……)
琴葉「あ、やっぱり昨日お会いした方ですよね。似てるのでそうじゃないかなとは思ってたんですけど……」
琴葉「こんな偶然もあるんですね」
ノア「……偶然」

きょとんとするノアの反応を訝しむ思う琴葉。
しばし見つめ合うふたり。

琴葉「偶然ですよね……?」
ノア「そうですね」
ノア「これから色々とよろしくお願いしますね」
琴葉「……? はい、こちらこそ」
琴葉「それじゃ、仕事に戻りましょうか。ノアさん、きっと大変ですよ」
ノア「え?」
琴葉(たぶん戻ったら、皆が構うだろうし)

ノアが紹介された時の光景を思い出している琴葉。
その横でノアは不思議そうな顔をしている。

〇マンション・ロビー(夜)

仕事を終え、帰宅する琴葉。
マンションに入る際、引っ越し業者と擦れ違う。

琴葉(……こんな時間に引っ越し? 大変だな)

〇マンション・廊下(夜)

琴葉(ん……?)

自分の部屋が見えてきたところで引っ越しが隣だと気づく。
荷物を動かしている男性の姿に既視感を覚える琴葉。

琴葉(……ん? うーん……?)

振り返る男性。
その姿に固まる琴葉。

琴葉「!?」
琴葉(ノアさん……!?)
ノア「また会いましたね」
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