音楽のほとりで
日本に帰ってきた桜は、次のレッスンで敬子に今までのことを報告する。
そしてフランスに行くことも……。
「今の桜ちゃん、今まで会った中で1番輝いているわ。来年から会えなくなっちゃうのは寂しいけれど……。桜ちゃんと出会えて良かった。ピアノも前よりもずっとずっと好きになったし」
「正直、今でも少し考えたりするんです。やっぱり日本に残ってこのままピアノの先生続けた方がいいのかなって。みんなと離れるのも寂しいし」
「そうね。そう思っちゃうのも無理はないわ」
「はい。……でも、色んな人の愛に触れて、私感動したんです。好きな人のためにそこまでできるんだって。せっかく、私も尚を好きになったんです。音楽は世界中にあるけれど、尚は1人しかいない」
「そうよ、好きな人は1人しかいないの。だからねえ、私が若い頃も好きな人を選んだのよ。ふふっ、懐かしいわあ」
敬子は、昔懐かしい恋物語を思い出すと、優しい目で過去を見ているかのように遠くを見つめる。
「パリでも、元気でね。まあ、きっと桜ちゃんなら大丈夫ね」
「敬子さんも。って言っても、まだあと数か月あるので最後の最後まで生徒でいてくださいね」
「もちろんよ。桜ちゃんのパワーをたくさんもらわなくちゃ」
そうして、2人はピアノのレッスンへと戻った。