音楽のほとりで
場所は東京から代わり、フランスでは尚と南の姿はパリの駅にある。
「尚さん、こっちです」
尚と南は、週末を利用して南仏のボルドーへ行くためにここに来ていた。
ボルドーはパリよりも田舎だが、フランスの中では治安が良いとされ、ワインや菓子のカヌレが有名である。
尚は、南の強い押しにより、ようやくその首を縦に振ったのだった。
「これですね」
ボルドー行きの電車は、もうすでに来ていて2人はそれに乗り込む。
電車の中はすでに多くの人が座っていた。
2人は、チケットに書かれてある座席番号を見つけると、そこに座って一息ついた。
「楽しみですね」
「そうだね」
朝ご飯がまだな2人はさきほどパン屋で買ったバゲットのサンドウィッチを袋から取り出して、それをむしゃむしゃと食べ始める。
すると、そのうち電車は駅から動き始めた。
電車の中で、2人は思い思いに過ごす。
尚は持ってきたピアノの楽譜を見て、なにやら眉間に皺を寄せてノートに何かを書き込んでおり、その顔は音楽家の高倉尚だ。
南はイヤホンをし、何かの音楽を聴いて目を瞑ってリラックスしている。
電車から見える風景は、徐々に建物から畑へと変わっていった。
見渡す限り、葡萄畑であろうか、パリとは違う長閑な田園風景が広がり、それを見た尚はどこか懐かしさを覚える。
「わあ、なんかいいですね」
南もいつも間にか閉じていた目を開けており、窓の外に広がるその風景を楽しんでいた。
そこからは、ボルドーに着くまで、車窓の外には同じような景色が流れていた。