あまい・甘い・あま~い彼に捕らわれて

さよなら颯馬

帰社時間近く、正面玄関前の街路樹にもたれ掛かる不機嫌な顔の颯馬の姿を見つけた。

逃げるわけにもいかず、仕事を終えて真っ直ぐに颯馬の元へ向かった。

「杏!」

名前を呼ぶ声は明らかに不機嫌で口をへの字にして怒っていた。

「仕事は?颯馬」

「午後から休ませてもらった。
仕事より杏のほうが大事だから。
ちゃんと話がしたい。
返された理由が聞きたい!」

手には杏(あんず)の花のネックレスがあり、私に見せるとぎゅっと固くその手を握りしめた。
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