あまい・甘い・あま~い彼に捕らわれて
「ごめん。

全部俺が悪い。

美桜のこと説明不足だし早く一人前になりたくて杏のことほっときすぎた。

早く結婚したくていろいろ焦ってた。」

「ねぇ颯馬」

私はそっと颯馬の胸を押して距離をとった。

「やっぱり私たち別れよう。

私といると颯馬に背伸びをさせて無理させちゃう。

何かあればこうして投げ出して私のこと優先させちゃうし。

私といることは颯馬のためにならないよ!」

ゆっくりと涙がひとすじ流れ落ち、どうにか笑顔を作り颯馬ににっこり笑いかける。

「今までありがとう颯馬。

さようなら」

車から降りると一気に涙が溢れだして止めることができない。

それでも背筋を伸ばしてしっかり歩いた。
私の最後の強がりだ。

顔は涙でぐちゃぐちゃなのに、流れる涙を拭うことなく、泣きながら颯爽と歩く姿に、すれ違う人たちが振り返る。

颯馬が私を追いかけて来ることはなかった。

車は走り去ることなく私の姿が見えなくなってもその場から動かなかった。

< 131 / 182 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop