あまい・甘い・あま~い彼に捕らわれて
そんな俺を唯一小さい頃から男として扱ってくれたのは、彼女だけだった。

それが何よりも嬉しくて、母さんのように甘い香りを漂わしている彼女にいつもまとわりついて

「杏ちゃん、可愛い」

とにこにこしながら顔を見るたびに言う俺を

「何言ってるの!?
杏よりも颯馬のほうがずーっと可愛いじゃない!」

と口を尖らせ拗ねる彼女がまたたまらなく可愛くて、愛しくてさらに俺の頬は揺るんでしまう。

小さな頃から俺の心をつかんで離さない彼女…坂口杏は俺より四つ年上で、俺がいくら頑張っても、どう背伸びをしても年の差は絶対に縮まることはない。

悔しいがそれが現実だった。

どんなに好きでも、どれだけ彼女に恋い焦がれても、俺は弟みたいな幼馴染み…

ずっとそれが彼女の俺に対する認識だった。
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