あまい・甘い・あま~い彼に捕らわれて
「 すごく愛されてるじゃん。

ちゃんと坂口さんの気持ち伝わってる。

せっかく迎えに来てるんだから、たっぷり甘えてこいよ」


「あっ…」
 
トンと背中を押されて気がつけば走っていた。

「颯馬!」

会社の前なのに人目をはばからず思いっきり抱きついて胸に顔を埋めた。

あぁ、甘い颯馬の匂い…

ぎゅっと抱きついたまま、渇ききった心が潤おいに満たされていくのを感じる。

「颯馬…仕事は?」

颯馬の腕が抱きついた私の背中にまわる。

「杏、お疲れ様。

なかなか会う時間とれなくてごめん。

母さんに働きすぎだってあげられた。

明日と明後日もやすめって。

親父が杏とゆっくり旅行してこいって勝手にホテル予約入れちゃったんだけど…一緒に行ってくれる?」

「えっ…」

颯馬の顔を見上げると探るような目で見つめている。




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