シュガーレスでお願いします!
「ど、どうしよう!!血が!!」
大事な利き腕なのに!!
私はパニック状態に陥り、無策で慶太の右腕にしがみついた。
「落ち着いて、比呂。ハンカチかなにか持ってないか?」
そうだ、止血しなきゃ!!
私は転んだ拍子にその辺に放り出したバッグからハンカチを取り出すと、傷口にきつく巻き付けた。ハンカチはジワリと血が滲んで直ぐに真っ赤に染まっていく。
「け、警察!!救急車!!」
私はハンカチを巻き付け終わると、携帯を取り出し震える指で110番に通報しようとした。
「待って比呂……!!警察じゃなくて、タクシー呼んで……!!」
慶太は怪我をしていない左手で、私が携帯の画面を操作できないように取り上げた。
「何で……!?」
「大ごとに……したくないんだろ……?」
傷口の痛みのせいで慶太の表情が徐々に険しくなっていく。
「大丈夫、血が出てるだけでそこまで深くない……から……」
「でも……」
「いいから!!」
それでも、慶太は最後まで譲ろうとしなかった。
「わ、わかった……!!」
私は警察に通報する代わりに、事務所の近所に住んでいる五十嵐先生に助けを求めたのだった。