シュガーレスでお願いします!

「はい、お土産よ〜」

裁判所帰りの香子先生は事務所に入ってくるなり、とある有名パティスリーの箔押しの箱を皆に見せつけるように天高く掲げてみせた。

「きゃ〜!!香子先生、素敵っ!!」

ハッハッハッと王様のように踏ん反り返る香子先生に群がるのは、事務員、パラリーガル含めた奥寺法律事務所の女性陣である。

人気のスイーツを気前よく差し入れをしてくれる香子先生は、この時ばかりはヒーローのように持て囃される。

「わあっ!!美味しそうなモンブラン!!」

香子先生から箱を受けとった女性達は箱を開けるなり、黄色い悲鳴を上げた。

「みんなで食べてね」

箱の中にはシロップ漬けの栗がチョコンとのせられたモンブランがこれでもかと、ぎっしりと詰まっていた。

モンブランというと、栗とさつまいもを使った物が2種類あるけれど、これはきっと栗を使ったモンブランだ。

だって、香子先生ってば去年も同じパティスリーのモンブランを買ってきたし。

(ああ、もう秋か……)

こんなところで秋の訪れを感じるとは全く情けない。

< 2 / 215 >

この作品をシェア

pagetop