シュガーレスでお願いします!
五十嵐先生と交代するようにして給湯室から戻ると、左隣のデスクの上野先生がウキウキしながら話しかけてくる。
「比呂先生、来週の飲み会来るよね?」
「はい」
「日本酒が美味しいお店らしいから楽しみだよね~」
奥寺三兄弟の一番下の三男、上野保先生はハムスターのような小動物を思わせる癒し系だ。
今どきの男性らしく長めの前髪を右に流したヘアスタイルと、笑うと目がなくなるという愛くるしい特徴を持つ。
入所してから全く変わらない顔立ちは、32歳というよりどう見ても元気な大学生にしか見えない。
奥寺法律事務所きってのいじられキャラ。愛すべき童顔である。
最近はもう開き直ったのかその人懐こい顔立ちを存分に生かし、もっぱら高齢者からの相続や資産相談に乗っている。
(よし……!!)
私はマグカップをデスクに置き、背筋を正すと、腰を持ち上げ改めて椅子に座りなおした。
しばし、慶太のことを頭から追い出し、作りかけの準備書面を仕上げてしまう。
私だってこの奥寺法律事務所の弁護士の端くれだ。奥寺三兄弟に負けてしまっては面目丸つぶれだ。
……しかし、そんな意気込みはすぐさま脆くも崩れ去るのである。