シュガーレスでお願いします!
「ええっ!!比呂先生の旦那さんってあの“有馬慶太”なんですか!?」
君島さんが人目をはばからず大声で叫ぶものだから、滑らかにメールを打っていた指先がピタリと止まる。
(この話題か……)
私は急に頭が痛くなったような気がして、ひっそりと額を押さえた。
「君島さんは先月入所してきたばかりだから、知らなかったのねー。本当よね、比呂先生」
「はい、そうです」
隠す理由も特にないので正直に頷くと、君島さんは一層目をキラキラと輝かせた。
「うわあ!!私、学生時代は就職するかパティシエになるか随分悩んだんです!!有馬慶太のケーキも大ファンで……。あれ……でも比呂先生って……」
興奮していた君島さんは最後の方で重大な事実に気づいてしまったのか、慌てて口をつぐんだ。
ひとから指摘されるより、自分から話した方がまだ傷が浅いだろう。
私はパソコンから君島さんに視線を移すと、彼女の気づきに正解である花丸を与えた。