シュガーレスでお願いします!
(何やってんだろう、私……)
逃げても逃げても、清水さんと慶太の姿が瞼の裏に焼き付いて離れない。
浮気現場を目撃したわけでもなし、逃げる必要なんて一切なかったのに、高校生以来の全力疾走である。
やがて、体力が底を尽き速度が緩むと、卵サンドの入った紙袋を所在なくぶら下げ、私はトボトボと元来た道を歩いて引き返していた。
衝動的な自分の行動をよくよく思い返しては、自己嫌悪に陥る。
おれは、単なる師匠と弟子によくある一コマだ。それこそ、相手が誰であろうと慶太ならああやって指導するだろう。
では、なぜ私はあの場から逃げ出したのだろう。
あの場から逃げることを選択した自分の行動が途端にわからなくなる。
……こんなこと初めてだ。
あの2人はやましいことなんてしていないのに、慶太が彼女の手に触れているのを見て、すごく嫌な気分になった。
胃液が逆流したみたいに喉が痛くて、へそのあたりがずっしり重くて気持ち悪い。
例えば苦手な角砂糖を口いっぱいに頬張ったとしても、こんな気持ちにはならないだろう。
極めつけはあの清水さんの笑みだ。
慶太一番近くにいるのは自分だとことさらに主張していた。