シュガーレスでお願いします!
(清水さん……?)
小難しい顔で食材を睨む慶太の傍らには、私に2度も手荒な接客をしてくれた清水さんがいた。
(どうして清水さんが……?)
心の中がさざ波が立ったように白いでいく。
新しいケーキを考えるときは、集中できるようにひとりでやるって言っていたのに……。
なぜ、彼女がここにいるの?
「有馬さん、どうですか?」
清水さんは熱心に腕の中にあるボウルの中身を慶太に見せていた。
なにかのクリームだろうか。
慶太はレモン色をしたクリームをヘラで掬い取ると、手の甲につけて味見した。
「違う、そうじゃない」
慶太はそう言うと、清水さんの背後に回り覚束ない手つきの彼女の手に自らの手を重ね、ヘラの使い方を直々に指導していく。
憧れの慶太から直接手ほどきを受けた清水さんの頬が高揚しているのが、この小さな隙間から見ても分かった。
胸の奥に苦いものが広がっていく中、偶然にも彼女がチラリとこちらを見たような気がした。
(え……?)
ふふんと勝ち誇ったような笑みを浮かべる清水さんを見て、卵サンドの入った紙袋が腕の中でグシャリとつぶれていく。
それ以上はとても見ていられなくて、私はsoleilから脱兎のごとく逃げ出したのである。