君への愛は嘘で紡ぐ
「やっぱり小野寺さんだ。どうしてここに?」


笑って声をかけてくれる先生は、あのころと変わりない。


「瑞希さんの、お母様のお見舞いに……」


お見舞いに来たが、笠木さんの態度が想像以上にダメージがあり、帰る途中だ。


「……玲生くんに、会った?」


汐里先生の声は小さかった。
心配してくれている目に、抑えていた気持ちが溢れ出る。


私は泣きながら頷いた。


汐里先生はそんな私を連れて、待合室に行った。


「はい、どうぞ」


自販機で買ったお茶を渡される。


「ありがとうございます」
「いいえ。お嬢様の口には合わないかもしれないけどね」


先生は笑いながら私の隣に座る。
だけど、すぐに笑顔が消えた。


「小野寺さんが泣いたってことは、玲生くん、冷たく接したのかな?」


答えられない。
はい、そうですと言いたくなかった。


「……やっぱりか。もう、頑固なんだから」


先生は大きくため息をついた。


先生が何を言おうとしているのかわからずにいたら、先生はポケットから丸められた紙を取り出した。


それを広げ、渡してくれる。


『小野寺円香に会いたい』


殴り書きされていたが、読むことはできた。


「これは……?」
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