君への愛は嘘で紡ぐ
「一年くらい前に、玲生くんが書いたものだよ。ゴミ箱に捨てられてたのを拾っちゃって、そのまま持ってたの」


先生はいたずらっ子のように笑う。


もう一度、くしゃくしゃになった紙を見る。


「笠木さんが……私に……?」


信じられない。
もし本当に会いたいと思ってくれているのなら、あのような態度にはならないはずだ。


いや、一年も経てば、人の気持ちは変わる。
彼は、今や私に会いたいとは思っていないのだろう。


「あの日から、玲生くんは小野寺さんに優しくしないって決めてるんだって。自分のことを覚えていたら、小野寺さんに迷惑になるからって」


腑に落ちるまで、そう時間はかからなかった。


笠木さんはわざと、私を冷たく突き放していたのか。


「……汐里さん、勝手に話しすぎ」


後ろから声がし、まさかと思い振り向くと、笠木さんが立っていた。


「だって……つらそうな玲生くん、これ以上見たくなかったんだもん」


汐里先生は立ち上がり、笠木さんのほうを向く。


「私、我慢したよ……?二年、見ないふりをした……でも……もう、限界だよ……」


見上げると、先生は泣いている。
笠木さんを盗み見たが、目が合ってしまい、目を逸らした。


「……お嬢様」
< 138 / 228 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop