君への愛は嘘で紡ぐ
「はは、俺のせいか」


それがなかったら、きっと私は勘違いをしていた。


真剣な瞳が私を捉える。
目を逸らしたくても、できなかった。


「俺はお嬢様のことが好きだよ。誰よりも大切で、幸せになって欲しい」


嬉しくて涙は出るし、心臓はうるさくなる。
今さらかもしれないが、涙を笠木さんに見られたくなくて、手で顔を覆う。


「……お嬢様、できればここに座ってほしい」


笠木さんは私が座っていた場所を数回叩く。
私は恐る恐る移動する。


すると、笠木さんは私の頬に優しく触れた。


「あ、あの……」


笠木さんが触れているところに意識が集中してしまう。
心臓の音はますます大きくなる。


笠木さんは何も言わず、私の涙を拭うと、私を抱きしめた。


「ごめん……今だけ、許して」


今だけと言わず、ずっと抱きしめていてほしいと思った。
誰かに触れられることで、こんな穏やかな気持ちになるなど、知らなかった。


しばらくして、笠木さんは離れてしまった。


それから汐里先生が待っていることもあり、笠木さんの病室に戻ることになった。


「お嬢様、車椅子持ってきてもらえる?歩けねーわ」


笠木さんは申しわけなさそうに笑った。
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