君への愛は嘘で紡ぐ
お母様に一番近くの曲がり角まで連れてこられた。


「玲生に会いに来てくれないかな!?」


立ち止まったと同時に、お願いされた。


「お嬢様って、小野寺円香ちゃんだよね?玲生が会いたいって書いてた子だよね?円香ちゃんが来てくれたら、玲生も元気になってくれると思うの」


私が言葉を挟む余裕もなく話される。


「お願い、円香ちゃん。玲生に少しでも長く生きたいって思ってほしいの」


それは私も思っている。
私にできることがあるのならば、協力したい。


なにより、もっと笠木さんに会いたい。


だが、できないのだ。


「……ごめんなさい……」


初めて向き合ったお母様は、とても疲れた顔をしている。
少しずつ目が潤んでいく。


「どうして……?玲生のこと、嫌い……?」


そんなわけない。
むしろ、逆だ。


私が、お嬢様だから。


「……無理言ってごめんね」


私が無言でいたため、私が笠木さんを嫌いだと思ったらしい。


お母様は笑えていなかった。
それは笠木さんのつらそうなときの笑顔に似ていて、胸が締め付けられる。


「でも、ときどきでいいから、来てくれないかな?」
「……はい」


そのお願いを断ることはできなかった。
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