君への愛は嘘で紡ぐ



自宅に帰ると、鈴原さんに出迎えられた。


「こんにちは、円香さん。おかえりなさい」


目が笑っていない。
ドアを閉めるが、そこから足が動かない。


「……ただいま戻りました」


まだ怒られているわけではないのに、体が強ばった。


「その感じだと自覚あるみたいですね」


鈴原さんはスマホを操作しながら私に近付く。
そして、目の前で止まって画面を見せた。


それは、笠木さんが私に抱きついている写真だ。


やはり知られていた。


「どういうことか説明してもらえますか?」


彼に告白され、抱き締められたと言って、納得してもらえるのだろうか。


「どうして彼に会いに行ったのですか?」


瑞希さんの言葉を思い出す。


笠木さんとのことを疑われたときの、言い訳。


「違います……私は、友人のお母様が入院していると聞いたので、お見舞いに行ったのです」


鈴原さんはまだ疑いの目を向けてくる。
信じてくれと心の中で祈る。


「たしかに、そういう報告もありますね。ですが、この状況の説明にはなっていません」


笠木さんを悪者だと思わせる言葉しか思い浮かばない。
そんなことは言えなくて、私は逃げたい気持ちから後ろに下がる。
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