君への愛は嘘で紡ぐ
そのとき、タイミング悪くお父様が帰ってきた。


前には鈴原さん、後ろにお父様。
逃げ場がない。


「お邪魔してます、お父様」


鈴原さんは笑顔でお父様に挨拶をする。
私は言いたくても、音にならなかった。


「円香」


お父様の低い声が私の体を縛り付ける。


「鈴原君に聞いた。あの男と関わるなと言ったことを忘れたのか?」


硬い動きで首を横に振る。


「偶然だとしても、会ったことは許さない。しばらく部屋から出るな」


納得いかなかった。
お父様との約束を破ったのは悪いと思う。


だが、ここまで上から押さえつけられるのは、気に入らない。


「……どうしてお父様は……そこまで笠木さんのことを嫌うのですか……」
「円香に悪影響しか与えないからだ。それに、円香には鈴原君がいる」


悪影響ではなかったし、鈴原さんはお父様が決めた相手だ。


「笠木さんは……お父様が思っているような人ではありません」


すると、空気が変わった。
それは二年前に感じた空気と似ていた。


「円香さんはまだ彼が好きだということですね」


鈴原さんがそう言うと、お父様はため息をついた。


私は重い空気に耐えられなくなったのと、また押さえつけられるような気がして、家を飛び出した。
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