君への愛は嘘で紡ぐ
玲生さんの手がベッドに落ちた。
瞼が閉じている。
隣の機械が一定の音で鳴っている。


「玲生、さん……?」


恐る恐る名前を呼ぶが、目を開ける気配はない。
視界が滲んでいく。


「嫌です!目を開けてください、玲生さん!」


玲生さんの体を揺らすが、目が開くことはない。


「私の料理を食べたいって……私といろんなところを旅したいって……そう言ったじゃないですか!」


ベッドのそばに座り込む。
だけど、玲生さんの手は離さない。


「私と、結婚するって……」


どれだけ拭っても、涙は溢れ出てくる。


「嘘つき……」


だけど、玲生さんの言葉に従うような演技をした私も、嘘つきだ。


玲生さんを忘れることなどできない。
玲生さん以外の誰かと幸せになれるなんて思えない。


「私には玲生さんしかいないのに……」


涙は枯れることを知らず、ずっと泣いていた。


少し落ち着いたころには、私は自分の部屋にいた。
どれだけ時間が経ったのかも、どうやって家に帰ったのかもわからない。


真っ暗な部屋で、ドアに背中を預けて座る。


玲生さんが死んだなんて、悪い夢だったのだ。
なんて、現実逃避をしようとするくらい、私は現実が受け入れられていなかった。
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