君への愛は嘘で紡ぐ
自分が運ぶと言わないあたり、お父様らしい。


私はそれ以上何も言わず、お父様の横を通る。
お父様が私を引き留めることもなかった。


玄関に着くと、一度箱を床に置き、靴を履いた。
改めて持ち上げ、背中でドアを開けながら家を出る。


門のそばには白い車が止まっていて、先生が立っていた。
私に気付いた先生は、駆け寄って来た。


「おはよう、小野寺さん」


挨拶をしながら、私の荷物を持ってくれた。
抵抗して自分で持とうと思ったが、先生が渡してくれず、お言葉に甘えることにした。


「おはようございます、汐里先生。今日はよろしくお願いします」


金曜日に今日の予定を立て、先生が迎えに来てくれることになっていた。
私がいらないものを提供すると言ったからだ。


「それにしても、小野寺さんのお家、すごいね。豪邸だ」


先生は背後にある私の家に気を取られながら、門に向かって歩く。


その箱を後部席に運び入れると、そのまま運転席に、私は助手席に乗った。
先生が車を発進させるけど、車内は音楽が流れているだけで、私たちの間で会話はなかった。


ほんの数分で着いた公園は、多くの人で賑わっている。
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