君への愛は嘘で紡ぐ
Second Lie
日曜日を迎えるまでに、必要なくなった、もう使わなくなったものを整理した。


柳は私が部屋の整理を始めたのではないかと思ったのか、「私がやりますから、お嬢様はお休みください」と言われたけど、断った。


なんとなく、自分でやってみたかった。


身支度を整えていたら、遠慮気味にノックの音がした。
髪に櫛を通しながら返事をすると、ドアが開く。


「円香お嬢様、市川様がおいでです」


奈子さんが部屋に入って一礼し、そう教えてくれた。


「市川……」


しかし聞いたことのない名で、首を傾げた。


「お嬢様の学校の教師だとおっしゃられていました」


それだけで、市川という人が誰か想像ついた。
恐らく、汐里先生だろう。
私は彼女の苗字を知らなかった。


「ありがとう、奈子さん。すぐに行くわ」
「そうお伝えしてきます」


奈子さんはまた一礼し、部屋を出た。


いらなくなったものを入れた箱を持って、部屋を出る。
玄関に行く途中に、お父様と出会ってしまった。


「おはよう、円香」
「……おはようございます」


久々に話すせいか、妙に緊張した声が出た。


「その荷物はどうした?」
「……もう必要がなくなったので、処分しようかと」
「そうか。だが、円香が運ばなくてもいいだろう?柳にでも頼みなさい」
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