君への愛は嘘で紡ぐ
「事実だろ。お嬢様がしていることは、逃避でしかない。お嬢様は完全にその世界から切り離れることはできないんだ」


笠木さんの言う通りだと思った。
どのようなことをしても、私は結局あの世界に戻る。


私の苦手な場からは逃げられない。


「それがわかっていてここに来たのなら、ただの逃避だ」
「私は、少しでも……」


その先がわからなかった。


少しでも、なんだ。
どうして私はここに、あの学校に来た?


「……私を、見て欲しかった……」


言葉にしてみると簡単で、だけどとても恥ずかしかった。


「……つまらないを通り越して、ただのバカだな」


笠木さんは呆れているように聞こえた。


何か言い返してやろうと笠木さんのほうを見ると、空を見上げいた。


「何もしないで理解して貰えると思ってるなら、甘い。自分を知ってほしいなら、見てほしいなら、相手を知ろうとしろ。関わりたいと思われていなきゃ、他人はそれほどお嬢様に興味ねーよ」


腹の立つ言い方ではあったけれど、笠木さんの言葉に、妙に納得している自分がいる。


「受け身のままいて、卒業して、元の世界に戻ってみろ。同じことを繰り返すどころか、それ以上に悲惨な結果になるぞ」
「どうしてわかるのですか?」
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