君への愛は嘘で紡ぐ
笠木さんは私と同じような環境にはいないはず。
それなのに、どうして断言できるのか不思議だった。


「子供がその世界に戻るわけじゃない。お嬢様自信にも、権力ができる。汚い大人はそれを狙う」


まるで、全てを知っているかのような言葉。
笠木さんは、何者なのだろう。


「……なんとなく、わかってんじゃねーの?今の自分じゃ、潰されるって」


何も言い返せなかった。
笠木さんが何者なのかは置いておいて、今の私には、周りを黙らせるような力などない。


「では私は、どうすればいいのですか……」


あまりに答えが見えなくて、泣きそうな声になっていた。


「変わるしかねーよ。受け身になるな。自分から行動しろ。こうありたいと思う姿を目標として、やれることをやれ」


やれることを、やる……


「お嬢様はどうありたい?」


そんなことを言われても、しっかりとした目標などない。
理想の自分像だってない。


笠木さんは面倒そうに頭を搔く。


「……なんのために教師がいると思ってんだよ」


笠木さんの質問に答えられずにいたら、そう言われた。


すると、笠木さんは何かを思い付いたかのように手を止めた。


「あーでも、汐里さんはやめとけ。あの人は想像以上に鈍かった」
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