君への愛は嘘で紡ぐ
瑞希さんの言う通りだ。
この学校に来なければ、彼がここに通っていなければ、出会うことはなかった。


それでも、そこまでやる気がないのにどうして通っているのかはわからなかった。


「夢だったんだよ。玲生くんの」


先生は何か昔を思い出しているのか、とてもつらそうな表情をしている。


私たちはその言葉の意味が理解出来ず、首を傾げる。


「高校に通うことが、玲生くんの夢だったの」
「……だったら、もっと真面目に通えばいいと思いません?」


先生の笑顔は、作り物だった。
上手く笑えていない。


さっきからときどき見せる、このつらそうな笑顔は、何を意味している?
先生は何を隠している?


「……通えない理由があるのですか?」


先生の笑顔が固まった。
それから気まずそうに顔を背けた。


「……玲生くんに、言うなって言われてるから、ごめんね、言えない」


泣きそうな声で言われてしまうと、それ以上は何も言えなかった。


「学校に、通えないって……」
「じゃあ、笠木は何か病気とかってこと?」


先生は答えない。
気まずく重い空気が流れる。


誰も動かなければ、話しもしない。
その沈黙が、笠木さんが病気ではないかという仮説を肯定しているような気がしていた。
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