君への愛は嘘で紡ぐ
汐里先生にはすぐに話してしまったのに、なぜか瑞希さんには誤魔化した。
その違いがよくわからないけれど、私は胸を撫で下ろす。


「笠木さん、お元気そうでよかったです。久しくお見かけしませんでしたので」
「俺は元気だよ。なんだ、そんなことで待ってたのか」


笠木さんは無自覚だろうけど、優しく微笑んだ。
それを見ると、私まで嬉しくなる。


「……はい」


瑞希さんが私と笠木さんの顔を交互に見ている。
それが気になってしまい、笠木さんに病気のことを聞くのは諦める。


「瑞希さん、どうかされましたか?」
「笠木が笑ったり、えんがめちゃくちゃ可愛く笑ったりって、頭が追いつかないんだけど」


笠木さんの笑顔が素敵なことは知っていたけど、私のことまで言われるなんて。
正直、ずっと愛想笑いばかりだったから、そう言ってもらえるのは嬉しい。
変わっていると言ってもらったようなものだ。


「俺だって笑うことくらいある」


笠木さんは不機嫌そうにそれだけを言うと、上履きに履き替えて行ってしまった。


「私たちも教室に行こっか」
「そうですね」


本当に遅刻ギリギリだったらしく、席に着いた瞬間にチャイムが鳴った。
瑞希さんと目を合わせ、間に合ってよかったと笑いあった。
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