揺れる被写体〜もっと強く愛して〜
思わず視線を戻してしまう。
レイさんは、ものすごく勘がいいことでも有名だった。
言い当てられてしまいそうでゴクリと喉が鳴る。
「この前言ったこと、気にしてる…?」
拳銃でこめかみを撃たれた気分……
「ムラムラしてるの?イイ男紹介しようか?」
横田 楓、灰になる。
お、お、覚えてるじゃないですかー!!
記憶がないってウソ!?
あの時の会話……覚えててくれた喜びと、上手い具合に勘違いしてくれてる複雑な想いが相まって。
私は訳の分からない感情に襲われ、レイさんの前で号泣してしまった。
慌てふためくレイさんに申し訳なくて、でも止まらない涙に自分自身どうしたらいいか分からない。
何なの、この気持ち。
とりあえず、ということで家の中まで送ってくれた。
「何か、色々抱え込んじゃってるの気付いてあげれなくてごめんね?私、楓ちゃんに頼りっぱなしだったね?本当ごめんなさい」
腰を90度に曲げて頭を下げるレイさん。
そうじゃないです……
私が気持ち悪いだけなんです……
更に泣く私をヨシヨシとさすってくれる。
それだけで嬉しさが込み上げる。
「私……居た方がいい?帰った方がいい?」
珍しく動揺してるレイさん。
これはレア過ぎるかも。
「男の涙は何とも思わないけど、女の子の涙はヤバいね?焦る……」
焦ってくれてるんだ……私なんかに。
だったら……甘えてみようかなって思う私はダメですか?