揺れる被写体〜もっと強く愛して〜



「レイさんが遊んでくれるの?だとしたらめちゃくちゃ嬉しい。すげぇタイプなんだよね、マジで」




ダメだこりゃ。
レイさんの横顔が相当怒ってるように見えるよ。
一気にピリついた空気。
やっぱりカメラを下げちゃった。





「あんま興味ないんだけどな〜」と再度前置きした上で被写体の元へ歩み寄っていく。
え?なに?なにが起きるの?
ハラハラしながらも、どんなショットも見逃すまいと私はカメラを構えてる。





「いいよ、遊ぼっか」




「マジ?やった!」




「その前に…」




「え?」




更に一歩前に出て彼の頬を包んだ瞬間に……キス!?
キスした……!?
そうにしか見えない角度だったけど!?
彼もびっくりしたのか絶句。
それともレイさんのフェロモンにやられたか。




でも、やってないってすぐに分かった。
だって彼の唇に親指当ててたもん。
勢いよくやってキスしたかのように錯覚させる。
いつだったか、男黙らせるにはこれが一番なんだって言ってたの思い出した。




確かに黙ったけど、レイさんって一瞬で惹きつけるのが得意だから予想以上に相手がダメージを受ける。
そしてその多くが落ちてしまう。
あの瞳で、あの視線で、あの唇でジャンル問わず翻弄してきたんだよね。




「あと5分でいいから喋らないで…」




「は、はい……」




完全に若僧を骨抜きにしました。
優しく微笑んで再びカメラを構える。
少々やり方は大胆だけども、こんな素早く撮影を再開出来るレイさんには尊敬の念しかない。








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