揺れる被写体〜もっと強く愛して〜
「楓ちゃん…?いやぁ……そんな見つめられたらさすがに照れるわ」
レイさんはちょっと気を引く行為が多過ぎる。
それでなくてもモテるのにもっと自覚してよ。
いや、自覚してる。
わざとやってるんだ。
魔性の女め…!
「おーい、楓ちゃん…?」
目の前にレイさんのドアップ…!
ハッと我に返る。
「どうした?ボーッとして」って誰のせいだ!
好きでもない人と関係なんて持たないで…!
「すみません、何でもないです」
必死に誤魔化して撮影に戻ったけど心のモヤモヤは消えないまま。
今日はレイさん撮るのはやめよう。
こんな気持ちじゃ返って失礼だ。
「横田さん?撮影終わりましたよ?」
「えっ!?」
辺りを見渡すとほぼ片付けも終わってる状態で、レイさんの姿はなかった。
すぐに楽屋に戻るも、電気はついてなくて中を見てもレイさんは見当たらない。
帰ってはいないみたいだけど…?
まさか、あの人とまた会ってたりしないよね…?
嫌な予感がする………
ポケットに入れてた携帯が鳴り出した。
すぐに出ると声の主はレイさんで……
屋上に居るから羽織るもの一枚持ってきてとの内容だった。
カーディガンを手にエレベーターに乗り込む。
屋上なんて珍しい。
やっぱり何かあったの……!?
ベンチに腰掛けていたレイさんはボーッと空を眺めていた。
そっとカーディガンを肩にかけてあげる。
「ありがと」と言う瞳は今にも泣きそうなほど潤んでいた。
黙って隣に座る。
どう声をかけていいか分かんない。
でも立ち去る選択肢はなかった。
何も言わないでいたらレイさんの頭が私の肩にそっと乗ってきた。