揺れる被写体〜もっと強く愛して〜



「出して」




ただならぬ空気に車内は静まり返る。
すぐに出してくれた千ちゃんも心配そうに見てるけど、最後に見た今にも泣き出しそうな顔を必死に頭から追い出していた。





「何でそこまで…?」って後で楓ちゃんに聞かれたけど言っても理解されないだろうな。
普通の恋愛が出来ない歪んだ私の愛情表現というか……




「幸せ過ぎて壊したくなっちゃうのかも……セフレで居た方が長く幸せのピーク味わえるから」




自虐的に言ったのに後ろからハグされて「嘘だ……レイさん嘘ついてる」って何で楓ちゃんが泣いてるの…?




「一歩踏み出す勇気……レイさんは他の人に教え過ぎて自分が疎かになってます……欲しいなら欲しいって言わないと伝わらない……そう言ったのレイさんじゃないですか」




「うん……そうだね」




だから何で泣いてるのよ。
代わりに泣いてくれてるの…?




「セフレで良いわけないです…まずは、レイさん自身が幸せになってほしい……」




「ありがとう……楓ちゃん」




今それ言われると、沁みるわ………
泣けない代わりに頷くしかなかった。




まさか自分がこんなに臆病だとは知らなかったよ。
情けないよね。
もう手遅れだってどこかで気付いてたのに。




どこからフラットじゃなくなったのかな………




「当日、ちょっと賭けに出るかも」




この一言で全てを把握してくれた楓ちゃんは優しく微笑んでくれた。
「全力でフォローしますね」って心強い。




本当、ありがとう………








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