揺れる被写体〜もっと強く愛して〜
「次は○○スタジオまで移動します」
スタジオからスタジオへの車移動。
地下駐車場に降りて千ちゃんの運転するワゴンに乗り込む瞬間。
「レイさん…!」
後ろから呼ばれて立ち止まる。
振り向かなくてもすぐに分かった。
「先に乗ってます」と楓ちゃん含め、他のスタッフも乗り込みドアを閉めてくれた。
一切振り向かない私に近付く気配。
「忙しいのにごめん……顔が見たくて…声も聞きたくて…でも、元気そうで良かった…」
やっぱりキミは思った通り私を乱してくる人。
どこまでも隙間に染み込んでくる。
少しは成長しなさいよ。
やれば出来るんだから、こんな場所に居ないで羽ばたくべきなんだ……
「勘違いしないで?」
「え…?」
「会いたい時に会う、したい時にする関係だったじゃない」
「でも…それはっ…」
「それ以上求められるとこっちもしんどい…」
「レイさん…」
「一人で飛べないなら興味ないから、もうこの関係は解消だね」
「レイさん…!」
腕を掴まれ体ごと向き合う。
ようやく視線が絡む2人。
久しぶりに見たあの瞳……直視出来ない。
「俺、ちゃんと…」
「帰り気をつけてね?記者張ってるから」
「は!?そんなの関係ない…っ」
ほんの一瞬の口づけ。
服を引き寄せ唇を重ねた。
時間ないからこれで黙らせる。
「じゃあね?バイバイ、もうここ来ちゃダメだよ〜?」
そう言い残して車に乗り込んだ。