揺れる被写体〜もっと強く愛して〜
「レイさ〜ん!」と駆け寄って来てくれたのは女子アイドル6人グループで以前、デビュー曲のプロモーションを撮ったことがある。
今じゃチケットの取れないグループとして大活躍だ。
取材カメラマンも私についてたくさんの共演者たちと写真を撮りまくっている。
「レイさん写真嫌いなんじゃ?」と心配してくれるメンバーの子が居たけど
「いや、今日は特別でしょ」
撮られてナンボ、ですよ。
噂が独り歩きしてるみたいだけど、私が嫌いなのは隠れてコソコソ撮られることだからね?
こっちの許可もないまま…というのが納得出来ないだけだから。
「南城、おめでとう」
笑うと出来るシワ。
相変わらず優しい笑顔。
来てくれたんですね。
「ありがとうございます、上川さん」
「嬉しいよ、教え子の輝かしい功績を見ることが出来て」
さり気なく私の好きな花束をセレクトしてくるところもスマートで悔しいくらい格好良い。
会場を見渡して「素敵な写真展だな」と言ってくれる。
「29番目の展示写真、見ましたか?」
「いや、まだ。これから見るよ」
「上川さんには敵わないけど、同じ感動を味わいたくて撮り下ろししました。後で感想聞かせてくださいね?」
「あぁ、分かった」とまだキョトンとしてたけど29番目っていうのにピンときてほしかったな。
私が感動したあなたの写真集、29ページに載っていたあの夕焼け。
香川県の父母ヶ浜、私も行ったんですよ?
同じアングルで撮り下ろしたけど、気付いてくれるかな?
出来れば一緒に撮りたかったなって。
あなたを忘れる為に撮ったのに、
結局長い間私を拘束し続けた。
今となっては、決別の意味で展示させていただきました。
良い意味での決別ね。