揺れる被写体〜もっと強く愛して〜
「おい、優吾どうしたんだよ…」
分かりやすく落ちてる俺にメンバーが声をかけてくるけど。
「帰って休むわ」
「えっ!?打ち上げは!?」
「行かねぇ…」
当然、そんな気分になれないし……
暗くてよくわかんなかったけど、
あの時のセリフ……
レイはどんな顔して言ったんだろ。
絶対……怒ってたよな?
声が冷たかった。
俺……
明日からどう歌えばいいんだよ……
レイが居ないライブは抜け殻同然だった。
歌詞は間違えるし、MC飛ばすし……
女と別れてもこんな事って一度もなかったのに。
引きづるって今の俺を言うんだよな……?
メンバーやマネージャーから叱咤激励され何とか乗り越えてきた。
明日でツアー最終日……17公演目。
ラストを迎える大阪に昨日から入ってる。
初日は無事終わったけど……
明日が終わったら、俺、何を糧にすればいいんだろ。
今はライブで気がそれてるのに、それがなくなれば…?
もうレイとは逢えない…?
「そうだ、さっきレイさんから写真集に使う候補データが送られてきたぞ」
マネージャーの一言に皆のテンションが上がる。
早速データを確認したら……
今にも汗が飛び散りそうな躍動感あるショットに誰もが言葉を失う。
メンバー1人ひとり一番いい顔してる。
あ……レイに向かって歌った瞬間。
お前に決めた視線……ちゃんと撮ってくれてたんだな。
写真集の表紙候補のソファーでのショット。
結構攻めたエロさが出てる。
俺だって初めて見るよ、こんなメンバーの顔。
すげぇな、レイ………
こんなの見たら、余計逢いたくなるじゃねぇかよ。
勝手に消えるなよ。
お前は俺たちの専属だって言ったろ。
俺の前から居なくなるとか許さねぇからな。
とにかく明日………
精一杯の力出し切ってお前に逢いに行く。
お前が撮ってくれた写真で俄然やる気が出た。
すげぇ景色用意してやるから。