揺れる被写体〜もっと強く愛して〜
こんな若くて美人だったなんてびっくりしてんだろうな。
俺だってひっくり返ったぜ。
「撮ろうか?」とか目を見てくれるだけで胸がいっぱいになる。
あんな別れ方してかなり嫌われたと思ってたから。
思いきり両手で親指立てたいいねポーズ。
一番良い笑顔で。
レンズ越しに届くように…!!
その後も観客席だけを撮り続けるレイ。
手を挙げて観客に気付かせて笑顔で撮ってる。
一通り撮ったら俺の元に来て。
「最後の挨拶、撮るよ」
中央に置かれたスタンドマイク。
素直に従う俺はスーッと深呼吸した。
「デビューして8年目にこんな大きなツアーが出来て本当に皆には感謝してる。俺たちはこれからもずっとGLEAMSだし誰1人欠けることなく突っ走っていく覚悟は出来てるんだ」
まさかこの時真後ろから撮られてるなんて気付かなかったけど。
ステージから見える景色をファンなら見てみたいと思うからってレイは後で言ってくれた。
俺から見える景色………
そこに視点を置いてくれたファン目線なレイの繊細な気遣い。
やっぱお前、最高だわ。
泣きながら言葉に詰まったら……
すかさずそんな姿も収めようとカメラを向けてきたから「撮るなよ…」と言ったら観客席から「撮ってー!」との声が。
観客席に向かってOKとジェスチャーして再びカメラを構える。
クソっ……涙で何も言えねぇ。
ムカつくからピースサインした。
思いっきり涙目だけど。
無事にツアーを完走して一番先に抱きしめたかったのに………
アシスタントの子たちがやたら時計を気にして「レイさんもう飛行機の時間ヤバいですっ」とか言って急ぎ足でツアースタッフやマネージャーに挨拶してる。
ちょ、待てよ。
飛行機って何?
サプライズは分かってたけど、
まさか思いきりスケジュール押して出演してくれたのか?
他のメンバーも続々と集まりレイにお礼を言ってる。
「すみません、この後ソウルで撮影あるので…」とアシスタントがそう言うのが聞こえた。