揺れる被写体〜もっと強く愛して〜
「本当、来てくれただけで嬉しかったよ!またね!」
「いえ、私のワガママで撮影させてもらったんで…満足です、行ってきます」
チラッと俺を見たレイは優しく微笑んだ。
そのまま俺が行かせるとでも……?
突き動かされるまま体が動いて腕を掴んだ。
皆が見てるからなんてどうでもいい。
時間がないんならここだって構わない。
この気持ちは誤魔化せないんだ。
抱き寄せキスしようとしたら……
まんまと手で阻止されてガックリ。
「ちょっ…!何してんのよ」
小声で抵抗されるとか傷付く。
「ヒュ〜!」とメンバーは煽るし
アシスタントの子たちは顔真っ赤だ。
「え〜!おあずけ?今日めちゃくちゃ頑張ったのに〜」
こうなったら拗ねるしかない。
きっと冷たくあしらわれるんだろうけど。
でも来てくれただけで充分。
「ごめん、行くね?」
スルリと俺から離れていく華奢な体。
曲がったら、本当に消えてしまう。
もしかしたら、
もう手の届かない場所に行ってしまうんじゃ……?
そんなの嫌だ……っ!!
「俺もうお前が居ないと歌えねぇからな…!」
曲がる直前、気付けば思いきり叫んでた。
ピタッと止まってくれた後ろ姿。
振り返った顔は真剣そのもので……
ツカツカと俺の元へ戻って来たレイは、何食わぬ顔でTシャツの胸ぐらを掴み自ら唇を重ねてきた。
ほんの一瞬の口づけ………
呆気にとられたままの俺に
「大丈夫、あなたは誰もが認めるプロのミュージシャンだから…歌い続けれるよ?」と言って微笑むんだ。
「バイバーイ」って今度こそ去って行く。
心の中にたくさんの爪痕を残して……
こんな忘れらない女……初めてなんだよ……
発売された写真集は未だに増刷している状態で売り切れ続出だってさ。
ツアーDVDも歴代No.1の売上げを誇ってる。
更に人気に火をつけてくれたおかげで国内のみならず、海外公演も決まった。
あれからレイとは逢えていない。
お互い忙しくて、作品を通してしか活躍ぶりを見ることは出来なかったけど……本気で言える。
俺の気持ちは変わってない。
神に誓って歌うよ……
レイの為だけに作った曲なんだ。
たまにはバラードもいいだろ?
だから………逢いたい………
レイ………
今、どこに居る………?