揺れる被写体〜もっと強く愛して〜
「ねぇ、何で泣いてるの?言って…?」
彼女は立ち上がり、俺の頬を包み込む。
まるであの日の光景が一瞬にして蘇る。
きた………この瞳。
この瞳に撃ち抜かれてきた。
「ごめん……好きだ……南城が」
揺れる瞳にとどめを刺した。
こぼれ落ちる涙を拭ってくれる。
「今だけ……ちゃんと名前呼んでもらってもいい…?」
「……美麗?」
「もう一度……それで告白して…?」
「美麗……好きだよ、俺は…どうしたらいい?」
そっと優しく重ねてくれた唇。
あの日と重なる。
優しくて……尊い。
ずっと……忘れられなかった。
近くに居ながら遠かった。
キミが誰かのものになるのが怖くて…
きっと耐えられない。
独り占めしたくて……けどそれも怖くて。
行き場のない想いが、いとも簡単に解放される。
長いキスの後。
「私こそごめん……離れなきゃいけないのに……苦しくて耐えれなかった」
溢れる涙を堪えて彼女は一歩下がった。
「でも、もうタイムリミットだね…」
「え……?」
「安心して…?これからの上川さんの未来を邪魔したりはしないから……」
ちょっと待って……
それ以上の言葉は今聞きたくない……
どこまでも勝手な俺に……
見透かしたように決めつけないでよ……
「次に上川さんに褒めてもらえたら言おうって決めてました…」
待って………
こんなにあっけなくなの……?
俺だけが……進めてない……
こぼれ落ちる涙を拭って真っすぐ顔を向ける。
またあの日の、決意に満ちた顔。
「今日まで……指導してくださってありがとうございました」
深く頭を下げる彼女に何も言えない俺。
こんな時の男は不甲斐ない。
格好良い言葉なんて浮かばない。
未練がましくすがる想いで溢れてる。