揺れる被写体〜もっと強く愛して〜
終わった後の天使のような微笑み。
モデルチェンジの最中も撮り終えたモデルがチラチラ彼女を見てる。
一瞬で惹きつける感じ…?
今までにないカメラマンだ。
そして、僕の番………
数人でのグループ撮影だったけど、カメラを覗いた彼女が顔を上げて僕を真っすぐ見てきた。
バッチリ目が合って数秒間……
再びカメラを構える。
え、何だ?今の……
目が合った瞬間、動けなかった。
胸に手を当ててみると心臓がバクバクしてる。
どの女性に対してもこんなことはなかったのに。
被写体を見てからの構える姿勢。
気付けば見惚れてる。
ポージングを忘れて仁王立ちしていた僕にカットがかかり我に返った。
「すみません…」
気を取り直そうとしっかり前を向いたら、彼女が通訳に向かって何か言ってる。
頷いた通訳が僕の元へ来て
「別撮りするから外れて」と言ってきた。
僕だけ?ちょっと待って!
反論しようとしたら
「あなただけを撮りたいそうよ」と言われて何も言えなくなった。
仲間が心配する中、僕だけが外れる。
どういう意味なんだろう…?
モデルとして失格…だったのかな。
確かに見惚れてしまったけど、
次は完璧にこなす自信はあった。
長身な僕がブランドイメージとピッタリなはずだから。
グループ撮影が終わり、
いざ僕だけの撮影が始まって……
セットの中に入ると、三脚からカメラを取り近付いて来た彼女。
隣の通訳が
「アップ撮った後に全体も撮るので」と言ってきた。