切愛願望~極上御曹司の庇護欲からは逃げられない~
「俺達でお母さんを支えてあげよう。きっと優しかったお母さんに戻ってくれる」
玲司さんはギュッと私の手を握る。
その手の温もりにひとりじゃないんだって思えた。

その日の仕事が終わると、玲司さんは接待があるということで晴人さんがマンションまで送って行ってくれた。
シャワーを浴びて部屋着に着替えると、冷蔵庫のものを適当に調理して食べる。
「玲司さんが家にいないと、ちょっと退屈だな」
家の中も静かだ。
考えてみたら、今まで会社が終わるといつもノワールに行って夕飯をご馳走になっていたんだよね。
ソファにドサッと腰を下ろしてテレビを観ていたが、昨日の疲れが溜まっていたせいか、すぐにまぶたが重くなって……。

誰かが私の頭を撫でている。
優しい手。
私の大好きな手だ。
「……玲司さん? お帰りなさい」
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